突き指に湿布はどうなの? 役立つ選び方と貼り方を解説
突き指をしてしまったとき、手元に湿布があれば「今すぐ痛みを何とかしたい」「とりあえず湿布を貼っておこう」と考える人は多いかもしれません。
しかし、湿布はあくまで症状を楽にするためのケアの一つです。湿布を貼ったからといって油断していると、骨折などの深刻なケガを見逃すことにつながりかねません。また、湿布の素材や使用感にはいくつかの種類があるため、適切に選ぶことが大切です。
今回の記事では、突き指に湿布がどのように役立つのか解説するとともに、湿布の正しい選び方・注意点についても詳しく解説します。
※この記事の目的は基本的な健康情報の提供であり、医師の診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず病院などの医療機関を受診してください。
突き指に湿布は役立つ?正しい選び方とは
突き指は、指先に強い力や衝撃が加わったときに起こるケガの総称です。
※参照:日本整形外科学会┃症状・病気をしらべる「突き指」
突き指の症状はいくつかあり、それぞれ見た目や痛みに違いが見られます。
【軽度】
関節を曲げると痛み、指が動かしにくくなります。骨を動かすための靭帯や腱などが軽く傷んでいる状態です。数日程度で自然に治ることが多いとされています。
【中等度】
指が熱く感じられ、強い痛みや腫れ・内出血が出ることが多いです。すっきりと治るまでに1~3週間ほどと時間がかかります。靭帯が部分的に切れたり、関節の周りの筋肉が傷ついていることもあります。
【重度】
指を全く動かせなくなったり、激痛を伴ったりします。指の骨の端が欠けてしまう剥離(はくり)骨折や、骨が関節からずれてしまう脱臼のケースもあります。場合によっては指の変形が見られ、すぐに病院などの医療機関に行く必要があります。ひどい場合には、完治までに2か月以上かかることもあります。
このように様々な症状がみられる突き指ですが、「湿布を貼っておいたほうがいいのかな?」「どのタイプの湿布を貼ればよいのだろう」と迷うのはよくあることです。ここからは、突き指をしたときに役立つ湿布の種類や選び方について説明します。
湿布の種類と選び方
湿布には、使用感(貼ったときの感覚)や素材・効果の持続時間など、さまざまなタイプが存在します。
【使用感】
湿布の使用感には、大きく分けて冷湿布(冷感タイプ)と温湿布(温感タイプ)の2種類があります。
冷湿布には冷たく感じる成分が含まれているため、湿布を貼って「スースーする」「ひんやり感じる」という経験をしたことのある人も多いのではないでしょうか。
炎症や痛みを和らげる成分も配合されていることも多く、皮膚から成分が入ることで突き指の症状が楽になる効果が期待できます。
一方、温湿布でホカホカするように感じるのは、温かさを感じる成分が配合されているためです。冷湿布と同じように、炎症や痛みを和らげる成分が含まれているタイプもあります。
詳しくは後述しますが、急性の痛みに効果があるとされるのは「冷却」です。突き指はケガによって指に炎症が起きている状態で、温めてしまうと症状が悪化する可能性があります。このため、突き指の炎症を和らげたいときには温湿布よりも冷湿布が適しています。
【素材】
湿布の素材には、主に次のような種類があります。
・ パップ剤::水分を多く含んだ、厚みのあるやわらかい素材です。肌にやさしくフィットし、はがしやすい特徴があります。
・ テープ剤:薄く、肌にぴったりと密着する素材です。はがれにくく目立ちにくいため、指のような細かい部分にも使いやすいでしょう。
湿布の素材は、貼りたい場所や肌の状態に合わせて選ぶのがおすすめです。
「市販の湿布を購入したいけど迷う」というときには、ドラッグストアの窓口やスタッフの方に質問してみると良いでしょう。
【持続時間】
湿布の持続時間は製品によって異なり、半日(約12時間)や1日(約24時間)などとパッケージに記載されています。貼りっぱなしにするのではなく、定められた時間で貼り替えるようにしましょう。
ここまで解説したように、湿布には冷たく感じる成分や素材・効果が続く時間など、さまざまな種類があります。「突き指で湿布を貼りたい」というときには、自分の肌の状態や貼りたい場所に合わせて、適切なものを選ぶことが大切です。
ただし「湿布を貼ったから大丈夫」と無理を重ねると、症状が長引いたり大きなケガを見逃したりするリスクがあります。
湿布はあくまで補助的な役割として考え、「安静にする」「氷で冷やす」などの基本的な応急処置をきちんと行った上で受診を検討するようにしましょう。
医療機関の湿布は医師の診断に基づいて処方されるため、より詳細な症状や体質に合わせた選択が可能です。
湿布・アイシング・冷却シートの違い
ドラッグストアにはさまざまな冷感アイテムがあり、突き指で「冷やしておこう」と思っても何を使えばよいか迷ってしまうことがあります。
湿布・アイシング・冷却シートの違いは次のとおりです。
【冷湿布】
冷湿布にはメントールやハッカ油など、皮膚からの感覚を通して「ひんやり」「スースー」と感じさせる成分が含まれていることが多いです。
しかし、スーッとする感覚があるからといって実際の体温が大幅に下がっているわけではありません。ケガをしている部分をしっかり冷やして温度を下げたいときには、氷を使った「アイシング」がおすすめです。
冷湿布には炎症を和らげる成分が含まれていることも多いので、アイシングで患部を冷やした後に貼るようにすると良いでしょう。
【アイシング】
アイシングは、氷や保冷剤を使ってケガをした部分を直接冷やす方法です。これにより、炎症を抑えたり痛みを感じにくくしたりする効果が期待できます。
詳しくは「RICE処置」で後述しますが、突き指などの急なケガの直後はアイシングがとても効果的と言われています。ケガをした部分を物理的にしっかり冷やすので、腫れや熱を落ち着かせるのに役立ちます。
【冷却シート】
冷却シートは貼るとひんやりしますが、湿布に含まれるような薬の成分は入っていません。熱っぽいときに一時的に気持ちよくなることはありますが、ケガの治療を目的としたものではないことに注意が必要です。
湿布の貼り方のポイント
湿布を貼るときにはいくつかのポイントがあります。
まずは指を冷やす
突き指の直後は、熱を持っていて腫れや痛みなどの炎症がひどくなりがちです。湿布を貼る前に、まずはアイシングでしっかりと冷やすようにしましょう。
後ほど解説するRICE処置の手順に沿って、タオルなどで包んだ氷のう等で15〜20分を目安に冷却を繰り返します。
しっかり冷やすことで熱が引いて痛みが和らいでくるので、その後に貼る湿布の効果も感じやすくなります。
貼りたい場所を清潔にする
湿布を貼る前には、指を清潔な状態にすることを心がけます。汗や汚れがついたまま湿布を貼ると、湿布がはがれやすくなったり、かぶれの原因になったりすることもあります。
指を水で洗った後は、しっかりと水分を拭き取るようにしましょう。湿布がはがれにくくなり、薬の成分も肌に届きやすくなります。
はがれにくいよう固定する
突き指は関節やその周辺が損傷していることが多いため、湿布はケガをしている関節からズレないようきちんと貼ることが大切です。
手の指は日常生活で動かすことが多く、肩や腰に比べて湿布がはがれやすいという困った特徴があります。これを防ぐには、湿布を貼った後にテープや包帯で上から固定するという方法がおすすめです。
関節の動きに沿うように湿布を部分的にカットし、上からテープで固定すると良いでしょう。
【湿布を貼るときの注意点】
湿布は突き指の痛みや炎症を和らげるのに役立ちますが、使い方を誤ると皮膚トラブルや症状の悪化を招くことがあります。次のポイントに注意してください。
1. 湿布には薬の成分が含まれているものがあります。アレルギー体質の方や皮膚が弱い人は、事前にパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。使用中にかぶれやかゆみ・発疹が出た場合はすぐに使用をやめ、必要に応じて医療機関を受診してください。
2. 湿布は傷口がある場所に貼らないようにしてください。傷口に貼ると刺激になり、治癒を遅らせたり感染を引き起こす可能性があります。突き指と同時に皮膚もケガした場合は、湿布の使用を避けて医師の指示を受けましょう。
3. 長時間貼ることによる皮膚へのダメージにも気をつける必要があります。説明書をよく読み、いつまでも貼りっぱなしにするのは避けましょう。湿布をはがした後は肌の状態を確認し、赤みやかゆみ、ヒリヒリ感がある場合は使用を中止してください。
テーピングの併用も一つの方法
湿布を貼った上からテーピングで指を固定すると、知らず知らずのうちに関節が動いてケガが悪化するのを防げます。
ただし、テーピングを強く巻きすぎると血の流れが悪くなるので注意が必要です。指の色が紫色などに変わったりしびれを感じたりした場合は、すぐに外して様子を観察してください。
テーピングの方法はいくつかありますが、最も一般的なのは「バディテーピング」と呼ばれる方法です。健康な指とケガをした指の2本を一緒にテーピングで固定し、ケガをした部分が動かないようにして負担を防ぎます。
【バディテーピングの巻き方】
1.突き指した指の隣にある指を1本選びます。
2.隣の指を添え木に見立て、上下2か所で固定します。
3.指を強く締め過ぎていないか、指先の色やしびれの有無を確認します。
テーピングや湿布はあくまで応急的な処置です。突き指だと思っていても、実は骨折や脱臼など重大なケガが隠れている可能性があります。
● 激しい痛み
● 腫れがひどい
● 指が曲がらない、または変形している
このような症状があるときに自己判断で処置を続けると、回復が遅れたり後遺症が残ったりするリスクがあります。無理せず病院などの医療機関を早めに受診するようにしましょう。
【応急処置】突き指の対処法「RICE処置」とは
突き指をしてしまったときの直後の基本的な応急処置として、「RICE(ライス)処置」という方法が広く知られています。ケガの悪化を防いで回復を早めるための対処法で、4つの処置の英単語から頭文字をとったものです。
「湿布を貼るから大丈夫」と安心せず、まずはしっかりRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を組み合わせて症状の悪化を防ぎましょう。
Rest(安静): 動かさないことが最優先
ケガをした直後は、痛む場所を無理に動かさないことが何より重要です。
突き指は、指の内部にある関節や靭帯・腱といった部分が傷ついている状態です。患部を安静に保ち、炎症が広がらないようにしましょう。ケガした部分のダメージを防ぐには、添え木やクッションを当てて安静を保つ方法も有効です。
湿布は炎症を和らげるのに役立ちますが、油断して指を動かし続けると症状がひどくなる・大きなケガにつながるというリスクがあります。
Icing(冷却): 氷を使った正しいアイシング
Icing(アイシング)は、ケガした部分を物理的に冷やして炎症を落ち着かせる方法です。氷を氷のうやビニール袋に入れ、タオルなどの布で包んだものを使います。
冷却時間は15〜20分を目安にし、これを数回繰り返して十分に冷やします。長時間冷やしすぎると凍傷のリスクがあるため、氷を直接肌に当てずに時間を守ることが大切です。1日に数回、間隔をあけて繰り返すと、ケガの悪化を防ぐ手助けになります。
なお、市販の冷湿布の「スースーする」という感覚は、皮膚を冷たく感じさせる成分によるものです。実際にケガした部分の温度を大きく下げる冷却とは異なるので、炎症を和らげるためには氷を使ったアイシングでしっかり冷やすようにしましょう。
Compression(圧迫): テーピングで腫れを抑える
Compression(圧迫)は、ケガをした部分に適度な圧力をかけて腫れを抑える方法です。テーピングや包帯を使って、指を軽く圧迫するように巻いていきます。
強く巻きすぎると血の流れが悪くなり、かえって症状が悪化することもあるので注意が必要です。もし巻いた後に指の色が変わったり、しびれを感じたりする場合は、すぐに緩めて様子をみるようにしてください。
Elevation(挙上): 患部を心臓より高い位置に保つ
Elevation(挙上)は、ケガをした部分を心臓より高い位置に上げておくことで、血の流れを抑えて腫れの広がりを防ぐ方法です。
座っているときや寝ているときはクッションや枕の上に指を置き、楽な姿勢で心臓より高い位置に保つと良いでしょう。
>>突き指とは?腫れてないけど曲げると痛い?病院に行く目安と自分でできる対処法
湿布を貼るだけで大丈夫?突き指で病院に行く目安
突き指をしたとき、湿布を貼って様子をみるという人は少なくありません。しかし、突き指だと思っていても実は骨折や脱臼といった重いケガをしている可能性があります。
以下のような症状がある場合は、自己判断せずに早めに病院などの医療機関を受診してください。
ひどい痛みが数時間以上続く
軽い突き指の痛みは、時間が経つにつれて徐々に和らいでいきます。
激しい痛みが続いて数時間経っても痛みが引かない場合は、骨折や靭帯をひどく傷めている可能性があります。
湿布を貼るだけではケガが長引いてしまうリスクも考えられるため、RICE処置をした上で早めに整形外科を受診してください。
腫れがひどい・変形している
突き指をしたとき、多少の腫れはよくある症状です。指全体がパンパンに腫れていたり見た目が明らかに不自然に変形していたりする場合は、骨折や脱臼のリスクが考えられます。
特に、指が曲がったまま元に戻らない・指の向きがおかしいといった変形が見られる場合は、早めに病院などの医療機関に行くことをおすすめします。放置すると、後遺症が残ったり指の機能が回復しなかったりする可能性もあります。
青や紫色になった
突き指した指が青色や紫色にひどく変色しているケースでは、指の内部で血管や神経などが大きく傷ついている可能性があります。
放っておくと指先が機能しなくなるリスクも考えられます。早めに受診し、適切な処置を受けることをおすすめします。
しびれや冷感がある
突き指をした指にしびれや冷たさを感じる場合も、指の内部に大きな負担がかかっている可能性があります。
指の感覚が鈍くなったり、動かしにくくなったりすることもあります。血の流れが悪くなって指先が冷たく感じられることもあるので、早めに病院などの医療機関を受診するようにしましょう。
折れたような音がした
突き指をした瞬間に「ポキッ」といった音が聞こえた場合は、骨が折れたり、靭帯が切れたりしている可能性があります。痛みもひどいことが多いです。
自己判断せずに医療機関でレントゲン検査などを受け、正確な診断と処置をしてもらいましょう。
突き指と骨折の見分け方
突き指の場合、一般的に痛みはあっても指は動かせることが多いです。一方、骨折の場合は激しい痛みで指を動かすことが難しくなります。
また、突き指の腫れは徐々に引いていきますが、骨折の腫れは時間が経つとともに強くなることがあります。指の形が明らかに変わってしまったり変な方向に曲がったりしている場合も、骨折しているケースが考えられます。
突き指と骨折の違いを自分で判断するのは難しく、指の内部に隠れている小さなケガは詳しい検査をしなければわかりません。
症状が強くて不安な場合には、早めに受診するようにしましょう。
【医療機関で受けられる検査や処置】
「突き指かな?」と思って医療機関を受診すると、問診や触診によってケガの状態を確認し、必要に応じてX線(レントゲン)検査などを行うのが一般的です。
骨折が疑われる場合や、靭帯などのケガが考えられる場合は、MRI検査やCT検査を行うこともあります。検査の結果から骨折や脱臼が判明した場合は、ギプスで固定したり場合によっては手術が必要になることも考えられます。
まとめ
湿布にはさまざまなタイプがあります。突き指で湿布を貼りたいときは、温湿布よりも冷湿布が適しています。説明書をよく読み、正しく使うようにしましょう。
ただし、湿布はあくまで症状を和らげる補助的な役割のものです。まずはRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)による応急処置を行い、必要に応じて受診することが大切です。
突き指の痛みや腫れがひどい場合や変形・変色がある場合は、骨折や脱臼などの大きなケガが隠れている可能性があります。
「湿布を貼ったから大丈夫」と油断せず、ケガをした部分を注意深く観察し、不安なときは整形外科のある医療機関で専門的な検査を受けるようにしましょう。
監修
あなぶきヘルスケア
事業部長 喜田 康生 |
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平成17年にプランドゥ穴吹に入社。その後、地域の医療介護検索サイト「病院・介護ナビmilmil」を立ち上げ、サイト営業で多数の病院、クリニック、介護施設などを訪問。
現在はあなぶきヘルスケアにて、広告コンサルティングを通じ、ブランディングなど幅広い視点から医療介護業界をサポート。 |