「つい美味しくて食べ過ぎてしまった」「食後に胃がムカムカして吐き気がする」といった経験は誰にでもあるものです。
食べ過ぎによる不快感や吐き気は、体が「少し休ませてほしい」と訴えているサインかもしれません。
繰り返してしまうと、せっかくの食事も楽しめなくなってしまいます。
この記事では、食べ過ぎて気持ち悪いと感じるときの対処法や、病院を受診するべき目安、予防策などについて解説します。
食べ過ぎや不調のサインをきっかけに、自分の体の状態を見直してみましょう。
※この記事の目的は基本的な健康情報の提供であり、医師の診断や治療に代わるものではありません。気になる症状が続く場合は、必ず病院などの医療機関を受診してください。
食べ過ぎて胃が気持ち悪いときの対処法5つ
「食べ過ぎて気持ち悪い」と感じたときは、体に無理をさせないことが回復への第一歩です。
ここでは、自宅ですぐに実践できる対処法を5つご紹介します。
姿勢を工夫して安静にする
食べ過ぎて不快感があるときは、まずは安静にして、お腹を圧迫しない姿勢をとることが大切です。
上半身を少し起こした姿勢で休むなど、負担を減らす工夫をしましょう。
ベルトやきつい服をゆるめておくと、お腹まわりの締めつけがやわらいで体をリラックスさせることができます。
なお、食後すぐに横になると、胃の中のものが逆流しやすくなり、吐き気やムカムカといった不快感が強まることがあるため注意が必要です。
体に負担のかからない姿勢を心がけることで、無理なく消化を進められるようにサポートしましょう。
急な吐き気に備える
吐き気が強いときは、まず落ち着いて対処できる環境を整えることが大切です。
慌てて動くと余計に気分が悪くなることもあるため、安心して吐ける場所を確保し、楽に過ごせる体勢をとります。
【吐き気が強いときに準備しておくと便利なもの】
● 洗面器やビニール袋など、すぐに吐けるものを用意して手の届く場所に置きましょう。
● 吐き気が治まらない場合は、衣服が汚れても良いようにタオルなどを準備しておくと安心です。
無理に吐き気を我慢すると、かえってストレスが強まり、症状が長引くこともあります。
「吐いてしまっても大丈夫」と思えるよう準備するだけでも、気持ちが少しラクになるかもしれません。
また、吐き気があるときは、においや温度に敏感になることがあります。部屋の換気をこまめに行い、香水などのにおいが強いものは身の回りに置かないようにしましょう。
吐いたあとは、口の中を水ですすいで清潔に保ちます。無理に歯みがきをすると刺激で気分が悪くなることがあるため、まずは軽くうがいする程度で大丈夫です。
あらかじめ準備をしておくことで、突然の吐き気にも落ち着いて対応することができます。楽な姿勢をとり、自分のペースでゆっくり体を休めてください。
ツボ押しなどのセルフケアを試す
胃の不調を感じたときは、無理のない範囲でセルフケアを取り入れてみるのも一つの方法です。
昔から伝わる特定のポイントを優しく刺激することで、体の働きをサポートすることが期待できます。
内関(ないかん):手首のシワから指3本分ほどひじ側、中央にある2本の筋の間にあるポイントです。気分が悪いときに、深呼吸しながら優しく数秒間押してみましょう。
足三里(あしさんり): 膝のお皿の下にあるくぼみから、指4本分ほど下のすねの外側にあります。ここを軽く押すことで、胃の不快感がやわらぐことがあるとされています。
体の負担にならない程度の水分をとる
嘔吐や発汗が続くと、体内の水分が失われやすい状態になります。
体の不調があるときも、脱水症状を防ぐためには適切な水分補給が欠かせません。
参照:健康のため水を飲もう講座丨厚生労働省
しかし、飲み物の種類や温度には注意が必要です。冷たい水や刺激物は体を刺激し、無理に水分をとろうとすると症状を悪化させることがあります。
気持ちが悪いときの水分補給は、常温かぬるめの水、白湯を少しずつ飲むようにしましょう。
スポーツドリンクや経口補水液を水で薄めて飲むのも、体に必要な水分や成分を補給できるのでおすすめです。
なお、炭酸飲料や柑橘系のジュース、カフェインを含む飲み物は、体に刺激を与える可能性があるため、避けておいたほうが安心でしょう。
体に負担がかからない種類の水分を少量ずつとることで、脱水を防ぎつつ体を優しく労ります。
市販薬を活用する
安静にしてセルフケアを試しても不快感が治まらない場合は、薬局やドラッグストアで売っている薬を試してみるのも一つの方法です。
薬剤師や登録販売者に自分の症状(吐き気、胃もたれ、胸焼けなど)を相談して、適切な薬を用法・用量を守って服用しましょう。
食べ過ぎで気持ちが悪いときに服用する薬には、次のような働きをするものがあります。
● 胸焼けを和らげる薬:ムカムカがあるとき
● 消化を助ける薬:胃腸がスムーズに働かないとき
● 胃の内側を守る薬:刺激から守りたいとき
なお、あくまで市販薬は一時的な症状の緩和を目的とするものです。
もし、薬を服用しても症状が続くようであれば、病院などの医療機関へ必ず相談してください。
こんなときは病院へ…受診するべき症状の目安
食べ過ぎによる一時的な気持ち悪さであれば、安静やセルフケアで改善することがほとんどです。
しかし、不快感が長引いたり他の症状を伴ったりする場合は、治療が必要な病気が隠れている可能性があります。
ここでは、食べすぎて気持ち悪いときに病院を受診するべき目安となる症状を解説します。
吐き気や胃もたれが続く・繰り返す
食べ過ぎが原因の場合、気持ちの悪さやムカムカといった一過性の症状は、一般的に数日以内に治まると言われています。
それ以上症状が続く、あるいは数日おきに同じ症状を繰り返す場合は、胃腸などの病気や異常が疑われるケースがあります。
● 2日以上、胃の不快感や吐き気が治まらない
● 食後の胃もたれやムカムカが、毎週のように起こる
● 市販薬を服用して治まっても、また繰り返す
このような場合は、自己判断せずに内科や消化器内科を受診し、根本的な原因を調べてもらいましょう。
気持ち悪さのほかにも症状がある
吐き気や胃もたれといった胃腸の症状だけでなく、全身に他の症状が出ている場合は、より深刻な病気が隠れている可能性があります。
胃腸以外の病気、例えば心臓などの臓器の異常でも、吐き気や腹痛が症状として現れることがあるためです。
次のような症状がある場合は、緊急性が高いケースが考えられるため注意が必要です。
● 激しい腹痛や背中の痛みを伴う
● 血を吐いた、または便の色に異常がある
● 発熱や強いだるさ、体重の急激な減少がある
● 意識がぼんやりする、冷や汗が止まらない
● 胸の痛みや圧迫感がある
激しい痛みや全身の症状、出血を伴う場合は、迷わず病院を受診するようにしましょう。
受診するときに医師に伝えるべきこと
いざ病院を受診する際、緊張して症状をうまく伝えられないことがあります。
受診するときは「気持ち悪い」という症状に加え、伝えるべき情報を事前に整理しておくようにしましょう。
診察がスムーズに進み、医師が正確に原因を判断する手助けとなります。
症状が始まった時期
いつ、どのくらい前から吐き気や胃もたれが始まったのか(例:急に昨日から、または数週間前から繰り返しているなど)。
具体的な症状
吐き気、ムカムカ、胸焼け、胃の痛みなど、どの症状が一番強いか。また、その症状が食前・食後・夜間など、どのタイミングで起こるのか。
食べたものと量
症状が出る直前に、何を、どのくらい食べたか(特に生物や脂質の多いものを食べていないか)。
自分で試した対処法
市販薬を飲んだか、安静にしたか。またそれによって効果があったか。
他の症状の有無
発熱、激しい腹痛、体重の減少、血便など、胃の不調以外の症状があるか。
過去の病気と服薬情報
過去に胃の病気をしたことがあるか、現在継続して飲んでいる薬やサプリメントがあるか。
食べすぎて気持ちが悪くなる原因と予防策
食べ過ぎによる吐き気やムカムカなどのつらい症状を防ぐには、原因を正しく理解し、普段から適切な対策をしておくことが大切です。
ここでは、食べすぎて体が気持ち悪いと感じる仕組みと、効果的な予防策を解説します。
胃のムカムカや吐き気の原因
食べ過ぎによって気持ちが悪くなる主な原因は、食道や胃といった部分への大きな負担と、それによって起こる体の調節機能の乱れにあると言われています。
消化不良
一度に大量の食物が胃に入ると、食べ物を溶かすための体の働きが追いつかなくなります。この結果、食べ物が消化されないまま長く留まり、胃が重く感じる胃もたれや不快感につながることがあります。
胃の膨らみ
胃がパンパンに膨らむと、胃の周りが刺激され、吐き気を感じることがあります。特に脂肪分の多い食べ物は、胃に留まる時間が長くなるため負担が大きくなります。
胃酸の逆流
食べ過ぎて胃の容量がいっぱいになると、胃の上部にあるフタのような部分が緩みやすくなります。これにより、胃から出る消化液が逆流してムカムカを引き起こす可能性があります。
自律神経の乱れ
急激な食べ過ぎは、胃や腸の働きを調整している体の機能(自律神経)に大きな負荷をかけることがあります。このバランスが崩れることで、吐き気や動悸などの不快な症状が出るケースがあります。
食べ過ぎてから胃が落ち着くまでの目安
食べ過ぎた後に胃が完全に空になり、不快感がなくなるまでには、数時間から半日程度かかると言われています。これは、食べ物の種類によって大きく異なります。
●消化が早いもの:おかゆやうどん、糖質など(2〜3時間程度)
● 消化に時間がかかるもの:肉類や揚げ物などの脂肪分の多い食品(5〜8時間程度)
脂質を多く摂りすぎた場合、胃が重いと感じる時間が長くなります。
「胃が気持ち悪い」と感じることのないよう、消化される時間を目安に安静にする時間や次の食事のタイミングを決めましょう。
落ち着くまでの時間には個人差がありますが、消化のスピードを知っておくことで自宅での対処に役立ちます。
悪化に注意!食べ過ぎたときに避けるべきNG行動
気持ち悪いときに良いと思って行動したことが、かえって症状を悪化させてしまう場合があります
胃腸にさらなる負担をかけないよう、避けるべきNG行動を知っておきましょう。
すぐに激しい運動をする
食後の激しい運動は、消化に必要な血液が筋肉に回ってしまい、消化活動を妨げることがあります。これにより、胃もたれが悪化する可能性があります。
熱すぎるお風呂に入る
熱いお風呂は全身の血流を急激に変化させ、体を調節する機能を乱す場合があります。胃の動きがさらに不安定になり、吐き気などの症状を強める可能性があります。
刺激の強いものを体に入れる
喫煙やアルコール、刺激の強い香辛料などをとるのは避けましょう。胃の内部をさらに刺激することがあります。
すぐに横になる
食後すぐに仰向けで寝ると、胃の内容物や胃酸が食道へ逆流し、胸焼けやムカムカを悪化させる可能性があります。横になる場合は、無理のない程度に上半身を起こしておきましょう。
症状を悪化させず体の回復を促すためにも、安静にして胃腸に優しく接することを最優先にしましょう。
食べ過ぎの予防策を知ろう
胃もたれや「食べすぎて胃が気持ち悪い」といった不調を起こさないためには、日頃から「食べ過ぎ」を防ぐ習慣を身につけることが最も効果的です。
ゆっくり噛む
よく噛むことで、満腹を感じる脳の機能が刺激され、食べ過ぎを防ぐと考えられています。また、唾液に含まれる消化するための成分が効果的に働き、胃の消化をサポートします。
食べる順番を工夫する
最初に汁物や野菜など、低カロリーで食物繊維の多いものから食べましょう。満腹感が得られやすくなり、結果的に食べ過ぎを防げるかもしれません。
アルコールや油物を控える
アルコールは食欲を増進させ、油っこい料理による胃もたれを招きやすいため、適量を心がけましょう。
水分を意識してとる
余分な食欲を抑えるためには、適度な水分摂取が効果的です。カフェインやアルコールは避け、飲み過ぎに注意しましょう。
軽い運動をする
食欲は単なる空腹感だけでなく、ストレスなどによっても左右されることがあります。食後すぐの激しい運動はNGですが、毎日継続できる適度な運動を心がけましょう。
食べ過ぎた後によくある質問
食べ過ぎた後、対処法に迷う瞬間は多いものです。ここでは、食べすぎて気持ちが悪いと感じるときによくある質問をQ&A方式でまとめます。
「吐きそう」…楽になる体勢は?
吐き気が強いときは、無理に体を横にせず、上半身を起こして楽な体勢をとることをおすすめします。
完全に仰向けになると、胃の内容物が食道のほうに戻りやすくなるため、不快感が強くなる可能性があるためです。吐いてしまった場合に、喉に詰まらせるリスクも高まります。
吐きそうなときは次のような姿勢をとって、体にかかる負担を和らげましょう。
● 椅子に座って背もたれにもたれかかる:お腹への圧迫が少なく、楽に感じやすい姿勢と言われています。
● 上半身をクッションなどで高くして横になる:完全に平らにならず、頭と胸を少し高くすることで、胃の内容物が戻るのを防ぎます。
● 体を少し前に傾ける:吐き気がピークのときは、前かがみの姿勢をとると楽に感じることがあります。
ゆったりとした呼吸で心身をリラックスさせ、落ち着く時間を作ることも大切です。
吐き気がしたら吐いた方がいい?
吐き気を感じた場合は、我慢せずに体の反応に任せるのが基本です。
吐き気が治まらないときは、セルフケアなどを試しながら安静にして症状が落ち着くのを待ちましょう。
なお、自己判断で無理に吐くことはおすすめできません。一時的に楽になったように感じても、体に大きな負担をかける可能性があるためです。
吐き気が続く場合や、嘔吐物に血が混ざっている場合は、ただの食べ過ぎではない可能性があります。病院などの医療機関の受診を検討してください。
気持ちが悪いときに冷たい水を飲むのはダメ?
食べすぎて気持ち悪いと感じたときは、体に余計な負担がかからないよう、ぬるめの飲み物で水分をこまめに補給するようにしましょう。
常温の水や麦茶を少しずつ口に含むようにすると、体への負担を抑えながら効率的に水分を補給できます。
冷たい飲み物を一度にたくさん飲むと、胃腸が刺激されてさらに気分が悪くなることがあるため注意が必要です。
どうしても冷たい飲み物でスッキリしたいときは、少しずつ水を口に含んだり、小さな氷を口の中でゆっくり溶かすのも一つの方法です。
吐き気の強いタイミングで水分をとろうとすると、かえって気分が悪くなることもあります。無理のない方法で、少しずつ水分補給するようにしましょう。
次の日の食事はどうするべき?
食べ過ぎた翌日は、まず胃腸を休ませることを意識しましょう。
前日にたくさん食べたことで、胃や腸が疲れていることがあります。そんな状態でいつも通りの量を食べてしまうと、回復が遅れたり、胃もたれが長引いたりすることもあります。
消化にやさしい食べ物としては、お粥や具のないうどん、よく煮込んだ野菜、豆腐などがおすすめです。
脂っこい揚げ物や香辛料の強い料理、食物繊維が多い生野菜や果物、冷たい飲み物などは、体に負担をかけやすいため注意が必要です。
食事の量は普段より少なめにし、少しずつ食べるのが安心です。「体を休ませる日」と考えて、少しずつリズムを整えていきましょう。
病院などの医療機関ではどんな検査ができる?
内科や消化器内科を受診すると、症状やこれまでの病気の経過に合わせて、いくつかの検査をすることがあります。
● 血液検査:血液を調べて、体の中で炎症が起きていないか、または内蔵の働きに問題がないかを確認します。
● 腹部エコー検査:お腹の表面に機械をあてて、中の様子を画像で調べる検査です。痛みはなく、体への負担もほとんどありません。
● 胃カメラ:細いカメラを口や鼻から入れて、胃の内側を直接見る検査です。胃のただれや逆流などの状態を詳しく調べることができます。
● X線検査(レントゲン):造影剤という液体を飲んで、胃や腸の形や動きを確認することがあります。
まとめ
食べ過ぎによるムカムカや吐き気、「胃が気持ち悪い」という感覚は、体が不調を知らせているサインの可能性があります。
一時的な不調であれば、安静にする、消化の良い水分をとるといったセルフケアで対処できます。
しかし、症状が2日以上続く、頻繁に繰り返す、あるいは激しい腹痛や出血を伴う場合は、体の中に病気が隠れている可能性があるため、迷わずに医療機関を受診してください。
日頃から「よく噛む」「腹八分目を意識する」などの予防策を実践することが、快適な食生活と健康的な毎日を送るための鍵となります。
監修
| あなぶきヘルスケア
事業部長 喜田 康生 |
|---|
| 平成17年にプランドゥ穴吹に入社。その後、地域の医療介護検索サイト「病院・介護ナビmilmil」を立ち上げ、サイト営業で多数の病院、クリニック、介護施設などを訪問。 現在はあなぶきヘルスケアにて、広告コンサルティングを通じ、ブランディングなど幅広い視点から医療介護業界をサポート。 |
