捻挫したらやってはいけないこと!対処のつもりが悪化?まずはどうする

捻挫をしてしまったとき、「これくらいなら大丈夫」と自己判断して、症状を悪化させてしまった経験はありませんか?
捻挫は日常生活やスポーツでよく起こる身近なケガですが、「大丈夫だろう」という一時的な油断が、後々に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。この記事では、捻挫を悪化させないための「やってはいけないこと」を分かりやすく解説し、早期回復に向けた基本的なポイントをまとめます。病院などの医療機関に行く目安や、お風呂や運動・部活の注意点、「1日でも早く治したい」と気になる効果的なケアについても説明します。
適切な対処法を知り、元の生活に戻るための第一歩を踏み出しましょう。
※この記事の目的は基本的な健康情報の提供であり、医師の診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず病院などの医療機関を受診してください。

捻挫が悪化する原因は?やってはいけないこと



捻挫とは、関節の主要な組織である靭帯が不自然にひねられることで損傷し、周辺の腱や軟骨といった組織も同時にダメージを受けることのあるケガを指します。捻挫は、日常生活やスポーツで多くの人が一度は経験する身近なケガの一つです。しかし、「歩けるから大丈夫」「いつもの痛みだからすぐ治るだろう」と放置すると、損傷した組織にさらなる負担をかけ、炎症を長引かせる原因となります。
ここからは、捻挫を悪化させる原因となる「やってはいけないこと」について詳しく解説します。

1. 放置する

よくあるケガであるとはいえ、捻挫を軽く考えて放置してしまうのは、症状を悪化させる大きな原因の一つです。たとえ軽度の捻挫であっても、関節を支える靭帯には少なからず損傷が生じています。
初期の段階で適切な処置を行わずに放置すると、炎症が進行して痛みや腫れが長引くだけでなく、靭帯が十分に修復されずに関節の不安定性につながるおそれがあります。同じ場所で捻挫を繰り返すといった再発・慢性化のリスクも高まります。
特に、強い痛み・腫れ・内出血・歩行困難といった症状がみられる場合は、単なる捻挫と自己判断せず、病院などの医療機関を受診するようにしましょう。

2.すぐに温める



捻挫の直後にお風呂に入ったり、カイロや湯たんぽなどで患部を温めるのは避けましょう。温めることで血液の流れが活発になると、患部の内出血や腫れ、炎症の悪化を招く可能性があります。捻挫の急性期(受傷後48時間程度)は、「RICE処置」(Rest=安静、Ice=冷却、Compression=圧迫、Elevation=挙上)を基本としたケアが大切です。特に「冷却(アイシング)」は炎症を早期に抑える上で欠かせない処置です。
整形外科では、ホットパック等の温熱療法を実施することもあります。医師や理学療法士などの指導の下で行うようにしましょう。

3.冷やしすぎる



捻挫の応急処置として冷やすことは大切ですが、過剰な冷却(=アイシング)は逆効果となる場合があります。冷やしすぎると血流が過度に抑えられ、凍傷のリスクや必要な酸素や栄養分の供給が妨げられるおそれがあるためです。氷や保冷剤を直接肌に当てるのは避け、タオルや布で包んで使用するようにしましょう。
適切な冷却時間は、1回あたり15~20分程度が目安です。皮膚の感覚が戻るまで休憩をはさみ、再び冷やすという処置を48時間ほどかけて繰り返します。

4.無理に動かす

痛みが残っている状態で無理に歩いたり、日常生活や仕事でつい我慢して体重をかけたりすると、損傷した靭帯にさらなるダメージを与える危険があります。特に捻挫の初期段階では炎症が強く、関節周囲の組織も弱くなっている状態です。この時期に過度な動きや負荷が加わると、関節の不安定性が進んだり捻挫がクセになったりするリスクがあります。
自己判断でマッサージやストレッチを行うのも逆効果になる場合があるため、理学療法士などの指導の下で行うようにしましょう。
無理に運動や業務に復帰するのではなく、医師の判断に基づき段階的に復帰することが大切です。

5.湿布に頼る

市販の湿布には痛みや炎症を和らげるタイプの商品もありますが、あくまで一時的な症状の緩和に過ぎません。「貼っておけば治る」と湿布だけに頼って放置すると、場合によっては重症な捻挫や骨折が見逃される可能性があります。痛みが強い・腫れが引かない・歩くのが困難など、少しでも気になる症状があれば整形外科を受診し、正確な診断と治療を受けることが大切です。湿布はあくまで補助的な手段と考えておきましょう。
詳しくは後述の「湿布はしたほうが良い?」で解説しますが、市販の湿布には「冷湿布」と「温湿布」の2種類があり、それぞれ使用するタイミングや目的が異なります。
冷湿布は貼ったときにスーッとする感覚があり、痛みや腫れが強いときに使用するのが適しています。一方、温湿布は温めることで血行をよくし、筋肉のこりや慢性的な痛みをやわらげる働きがあります。ただし、炎症が残っている段階で使うと、かえって悪化するリスクがあるため注意が必要です。湿布を使うときには自己判断で購入せず、できるだけ医師や薬剤師に相談して症状にあった商品を選ぶようにしましょう。

6.飲酒する

捻挫直後の飲酒は、血行を促進するため、腫れや内出血・炎症の悪化につながる恐れがあります。アルコールによって痛みに鈍くなることで、無意識のうちに患部を動かして負担をかけてしまうリスクも高まります。特に腫れが引いていない・痛みが強いといった状況では、アルコールの摂取を避け、療養に集中できる環境を整えることが大切です。

7.不安定な履物をはく

ヒールの高い靴やサンダルなどの不安定な履物を履いて歩くと、捻挫の症状が悪化するリスクが高まります。「少しなら大丈夫」と無理に歩き続けると、同じ部位を繰り返し痛める原因になりかねません。回復期間中は、足首をしっかりとサポートできるスニーカーなど、安定感のある靴を選びましょう。また、必要に応じて医師などから指示された装具やサポーターを装着することで、早期の回復を目指せます。

病院に行く目安は?セルフチェック



捻挫をしたとき、「そこまでひどくないから」と病院などの医療機関を受診しない人は少なくありません。しかし、痛みの強さや見た目だけで軽症と決めつけてしまうと、知らず知らずのうちに捻挫を重症化させるリスクが高まります。特に靭帯の断裂や骨折が合併している場合など、専門的な治療が必要なケースを見逃してしまうと大変です。前述の「やってはいけないこと」を無意識に繰り返し、慢性的な痛みや関節の不安定性につながる可能性もあります。
ここでは、捻挫と骨折との見分け方や、病院などの医療機関を受診すべき症状の目安、簡単なセルフチェックの方法について解説します。

捻挫と骨折との見分け方

捻挫と骨折は、どちらも「関節の周辺に痛み・腫れがある」という点では共通しています。しかし、損傷の深さや治療方法は大きく異なります。特に重度の捻挫と軽度の骨折は症状が似ているため、自己判断は非常に危険です。骨折を見逃してしまうと、無理な動きによって症状が悪化し、骨の変形(曲がる・ねじれる・短くなる)などを引き起こす可能性もあります。
捻挫と骨折ですが、以下のような点をチェックしてみてください。



捻挫 骨折
痛み方 安静時は比較的楽なこともあります。
関節をひねるような特定の動きで、痛みが強くなる傾向があります。ひどい場合は歩けません。
安静にしていてもズキズキとした持続的な痛みや、軽く触れるだけで激痛が走ることもあります。
皮膚の見た目 腫れや内出血が生じますが、範囲は限定的です。 腫れや内出血が広範囲に及び、時間の経過とともに大きく広がる傾向があります。
変形 関節の見た目に大きな異常は出にくいです。 患部が不自然に変形しているように見えたり、通常ではありえない方向に動いたりすることがあります。
体重負荷時 痛みを伴いながらも、軽くなら体重をかけられることがあります。 患部に体重をかけると激痛が走り、ほとんどの場合、体重をかけることが難しくなります。
受傷時の音 「ブチッ」「グギッ」といった靭帯が切れる音を感じることがあります。 「ポキッ」「パキッ」といった硬いものが折れる音が聞こえることがあります。

これらの症状はあくまで目安であり、自己判断は禁物です。
強い痛み・大きな腫れ・変形・体重をかけられないといった症状が見られる場合は、迷わず病院などの医療機関を受診し、レントゲンやMRIなどの画像検査を受けるようにしましょう。

重症度をセルフチェック

捻挫の重症度は、一般的に靭帯の損傷の程度によって3段階に分かれます。



重症度 チェックポイント
Ⅰ度(軽度) ・軽い痛みや腫れ ※患部を押したりひねったりすると痛みがある ※長時間の歩行が難しいこともある・関節のぐらつきはない
Ⅱ度(中等度) ・強い痛みや腫れ・関節のぐらつき・歩行や日常生活に支障がある
Ⅲ度(重度) ・激しい痛みや腫れ・広範囲の内出血・歩行不能・関節が不安定

以上のセルフチェックはあくまで一般的な目安であり、診断は医師が行うものです。少しでも不安を感じる場合は、症状の軽重に関わらず病院などの医療機関で受診してください。
早期に適切な診断と治療を受けることで、後遺症のリスクを最小限に抑え、スムーズな回復を目指せます。
・歩けるけど腫れている
・捻挫したけど腫れていない


このような症状があるときは、以下の記事も参考にしてください。
▶▶捻挫して歩けるけど痛い!くじいた足首の腫れの対処法などを解説

お風呂に入ってしまったけど大丈夫?



温かいお風呂は日頃の疲れを癒してくれるものですが、捻挫の急性期には症状を悪化させる危険をはらんでいます。前述の「やってはいけないこと」でも解説したとおり、患部を温めたいときには一定の条件を満たしている必要があります。
捻挫と入浴に関する基本的な知識と、回復を早めるための注意点について解説します。

お風呂はいつから入って良い?温めるほうが良い?



捻挫の急性期(受傷直後から24〜48時間)の間は、炎症反応が活発に進行しており、内出血や腫れが起こる可能性がありますので、捻挫直後のお風呂は基本的に避けるべきでしょう。
お風呂に浸かっても良いと考えられるのは、患部の炎症や腫れが軽くなってくる回復期に入ってからです。一般的にはケガから数日が経ち、症状が治まってきたタイミングが該当します。
・腫れが引いてきている
・患部に熱を感じない
・痛みが軽減している

このような条件を満たすようなら、入浴を検討しても良いでしょう。ただ、いきなり熱いお湯に浸かるのではなく、最初はぬるめの温度から始めて状態を注意深く観察しながら温度を上げていくようにします。

お風呂上がりは冷やす?

捻挫の炎症が完全に治まって回復期に入っているのであれば、お風呂上がりにあえて冷やす必要性は低いと考えられます。しかし、炎症が完全に治まっていないケースでは、お風呂が再び腫れや痛みを引き起こすきっかけとなる可能性もゼロではありません。もし入浴後に痛みや腫れを感じるような場合は、再びしっかり冷却(=アイシング)したほうが良いでしょう。
なお、温かいお湯と冷たい水に繰り返し患部を浸す「交代浴」という方法もあります。回復期に交代浴をすすめている医療機関もありますので、状況に合わせたアドバイスを受けるようにしましょう。

1日で治すのは無理?何日で治る?早く治すには



捻挫をしてしまったら、誰もが「早く治したい」と願うものです。特に、スポーツをしている人や仕事で体を動かす機会が多い人は、一刻も早く元の生活に戻りたい気持ちが強いでしょう。しかし、捻挫を「1日で治す」のは残念ながらほぼ不可能です。運動や部活を休むべき期間のほか、市販の湿布の使い方、そしてマッサージやストレッチをする場合のポイントについて解説します。

運動・部活を休む期間は?運動しながら治すのは?

捻挫が治っていない状態での運動・部活の再開は、捻挫の再発リスクを高めるだけでなく、慢性的な関節の痛みや不安定性につながるため大変危険です。

負傷している箇所は、安静を要する期間はしっかり安静を守り、その期間が過ぎたら医師の指示のもとに段階的かつ積極的にトレーニングしてください。安静を要する期間は、個々の負傷ごとに異なるので、医師と十分相談することが重要です。
引用元:日本臨床整形外科学会「やって良いこと、悪いこと」

捻挫の重症度によって、運動や部活を休む期間は大きく異なります。
完全な復帰には個人差がありますが、一般的には次のような期間が目安とされています。
【I度(軽度)】
ごく軽い場合は、当日または2・3日で競技復帰が可能です。症状によっては、2週間ほど休まなければならない場合もあります。
【II度(中等度)】
競技復帰まで2~3週間、ケースによっては2ヶ月ほどかかることがあります。装具やテーピングなどによる固定が効果的です。
【III度(重度)】
競技復帰まで早くても1~2ヶ月、長い場合には4ヶ月以上を要する可能性があります。完全な復帰には半年以上、場合によっては1年近くかかることもあります。ギプスや装具による固定のほか、場合によっては手術が必要です。

捻挫の痛みが感じられなくても、必ず医師や理学療法士の指示に従い、段階的に運動強度を上げていくことが大切です。
自己判断による早期復帰は避け、トレーニングの部位や強度を相談しながら安全な状態での復帰を目指しましょう。

負傷している箇所以外は、積極的にトレーニングしてください(ただし、負傷している箇所に悪影響を及ぼすものであってはなりません)。これは、心肺機能や健常部位の機能低下を防止するために大切なことです。
引用元:日本臨床整形外科学会「やって良いこと、悪いこと」

湿布はしたほうが良い?



市販の湿布には捻挫の症状緩和に役立つものがありますが、その使用方法やタイミングには注意が必要です。
前述の「やってはいけないこと」でも解説したとおり、「湿布だけで治そう」と頼りすぎるのは危険です。湿布をしても痛みや腫れが強いときには、早めに病院などの医療機関を受診しましょう。
冷湿布
捻挫直後の急性期(受傷から約48〜72時間)は、冷却(=アイシング)が基本です。腫れや炎症、熱感があるときは、氷のうなどで患部を冷やして炎症を抑えます。
鎮痛成分が配合された冷湿布は、安静・冷却・圧迫・挙上(RICE処置)といった基本的な応急処置と合わせて行うことで、症状の緩和に役立つ可能性があります。
温湿布
慢性的な軽い痛みや違和感が残っているケース(受傷から数日後〜)では、温湿布に切り替えると血行を促進し、症状の緩和に役立つ可能性があります。お風呂に入ると症状が緩和されるようなときに、温湿布を選ぶのが良いでしょう。

症状が改善しない場合や強い痛み・腫れがある場合は、市販の湿布に頼らず、必ず病院などの医療機関を受診して診断を受けるようにしましょう。

マッサージやストレッチは効果的?

マッサージやストレッチは、捻挫の回復段階や症状の程度によって効果が大きく左右されます。自己判断で行うと症状が悪化し、回復が遅れるリスクがあるため細心の注意が必要です。
マッサージ
捻挫直後に自己判断でマッサージをすると、かえって炎症を広げたり、捻挫を悪化させたりするリスクがあります。腫れや痛みが強いうちのマッサージは避けましょう。痛みが落ち着いてきた段階で、医師や理学療法士の指導の下で行うのが安全です。
ストレッチ
マッサージと同様に、無理なストレッチは再び靭帯を伸ばしてしまう可能性があります。一般的には痛みや腫れていない状態になってから、リハビリの一環として軽いストレッチを始めます。関節の柔軟性を取り戻すことで、再発予防や回復のサポートが期待できます。

マッサージやストレッチは、捻挫の回復において大切な役割を果たしますが、それは適切な時期に適切な方法で行われた場合のみです。医師や理学療法士などの指示を受けて取り入れるようにしましょう。

まとめ

この記事では、捻挫を悪化させてしまう「やってはいけないこと」のほか、病院などの医療機関に行くべき目安、お風呂や運動・部活を休む時期についてのポイント、そして早く治すための湿布やマッサージ・ストレッチに関する情報を解説しました。捻挫の急性期には、患部の安静・冷却(アイシング)・圧迫・挙上を徹底するRICE処置が非常に大切です。
激しい痛み、著しい腫れ、関節の変形、体重をかけられないといった症状が見られる場合は、迷わず病院などの医療機関に相談しましょう。
【捻挫を悪化させないための重要ポイント】
・急性期にはRICE処置を徹底する
・症状に応じて速やかに病院などの医療機関を受診する
・専門的な指導の下、適切なリハビリを行う

「1日で治す」ことは現実的ではありませんが、正しい知識と適切なケアを継続することで、健康な生活を取り戻すことは十分に可能です。

監修




あなぶきヘルスケア
事業部長 喜田 康生
平成17年にプランドゥ穴吹に入社。その後、地域の医療介護検索サイト「病院・介護ナビmilmil」を立ち上げ、サイト営業で多数の病院、クリニック、介護施設などを訪問。
現在はあなぶきヘルスケアにて、広告コンサルティングを通じ、ブランディングなど幅広い視点から医療介護業界をサポート。

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